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​法多山 尊永寺

​愛染堂

瓦師

​法多山尊永寺

​愛染堂建立

法多山尊永寺様 愛染堂新築工事に携わり

 


飛鳥工務店様から法多山尊永寺様で八角堂を新築すると聞いた時、とてつもない鳥肌が立った事を今でも覚えています。このご時世に新築で八角堂を建てられる事などほぼありませんし、

ましてや携われるなど想像もしていませんでした。正に夢のような仕事が舞い込んできたのです。今までにやった事も、考えた事もない八角堂。不安な気持ちが込み上げてくるかと思いきや、それどころか、八角堂をやれる嬉しさで心が浮き立ちました。





まずは八角堂を知る為に飛鳥工務店の棟梁と奈良県法隆寺の夢殿に脚を運びました。そこで、「こんな素晴らしい物件を手掛ける事ができるんだ」と胸が躍りました。何度か見学に行った事はあったのですが、いざ自分が八角堂を施工するとなったら今までとは見る目線が変りました。細部にわたり、「どのような納まり方なのか」「なぜこのような納め方をしたのか」視点を変えながらあらゆる角度から見て考えて紐付けの繰り返しをすることにより色々な事が見えてきました。やはり本物を見る事は重要で吸収する事が多くありました。


そして、吸収した事を活かし構想を考え、それを瓦の図面に起こす作業に入りました。正方形や長方形の考え方とは違うと分かっていましたが、どのように展開していけば良いのか苦戦しました。周りに八角堂に関わった事のある方がおらず聞けるあてもない中、何とか模索しながら宝形の考え方を応用して八角堂に展開する事が出来ました。仕上がった図面は今まで書いてきた図面とは違い異次元の世界。「八角堂になるとこんな納まりになるんだ」と改めて今回の物件の大変さを感じました。このように瓦の図面を書く事によって、瓦がどのように納まるのかが分かり、そこから「雨漏りに影響はないか」「棟の段数は何段にするのか」「鬼瓦はどのくらいの大きさにするのか」「建物に対してバランス良く納まるのか」といった事が全て見えてくる重要な作業なのです。その図面を書いている時も心が躍り職人魂をくすぐられました。

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法多山尊永寺様 愛染堂新築工事に携わり

 

 飛鳥工務店様から法多山尊永寺様で八角堂を新築すると聞いた時、とてつもない鳥肌が立った事を今でも覚えています。このご時世に新築で八角堂を建てられる事などほぼありませんし、

ましてや携われるなど想像もしていませんでした。正に夢のような仕事が舞い込んできたのです。今までにやった事も、考えた事もない八角堂。不安な気持ちが込み上げてくるかと思いきや、

それどころか、八角堂をやれる嬉しさで心が浮き立ちました。


 まずは八角堂を知る為に飛鳥工務店の棟梁と奈良県法隆寺の夢殿に脚を運びました。そこで、「こんな素晴らしい物件を手掛ける事ができるんだ」と胸が躍りました。何度か見学に行った事はあったのですが、いざ自分が八角堂を施工するとなったら今までとは見る目線が変りました。






 細部にわたり、「どのような納まり方なのか」「なぜこのような納め方をしたのか」視点を変えながらあらゆる角度から見て考えて紐付けの繰り返しをすることにより色々な事が見えてきました。やはり本物を見る事は重要で吸収する事が多くありました。そして、吸収した事を活かし構想を考え、それを瓦の図面に起こす作業に入りました。正方形や長方形の考え方とは違うと分かっていましたが、どのように展開していけば良いのか苦戦しました。周りに八角堂に関わった事のある方がおらず聞けるあてもない中、何とか模索しながら宝形の考え方を応用して八角堂に展開する事が出来ました。仕上がった図面は今まで書いてきた図面とは違い異次元の世界。「八角堂になるとこんな納まりになるんだ」と改めて今回の物件の大変さを感じました。このように瓦の図面を書く事によって、瓦がどのように納まるのかが分かり、そこから「雨漏りに影響はないか」「棟の段数は何段にするのか」「鬼瓦はどのくらいの大きさにするのか」「建物に対してバランス良く納まるのか」といった事が全て見えてくる重要な作業なのです。

その図面を書いている時も心が躍り職人魂をくすぐられました。

 

 鬼瓦の大きさが決まり、いざ発注。鬼瓦は鬼の顔を表現する仕様になっていて、それを八方に据え付けます。そこで飛鳥工務店の棟梁と鬼師と私の三人で、どのような演出ができるか討論し、今回の鬼の表情を提案させて頂きました。正面右側より時計周りに、1.子供(子孫繁栄)⇒ 2.男女の結び(結婚)⇒3.天寿(息災延命)⇒4.増益となり、次の5・6(裏)の二個は愛染明王様の後ろに飾られている鳳凰(復活・蘇り)をイメージして作りました。その次に7.憤り⇒8.浄化⇒そしてまた1.子供に戻る。このように人間のあり方を八方の鬼瓦で表現

させていただきました。棟梁と自分の思いが鬼師にも伝わり、その意気込みが鬼瓦の表情に出ていると感じさせる、とても良い鬼瓦となりました。 


 大工様が野地を貼り屋根の形が出来た時、飛鳥工務店の棟梁と長い年月、打合せを行い反りや勾配、瓦がきれいに納まるように屋根寸法を計算し、調整をしてきたものが出来上がり、その出来上がった姿を見て感動しました。そこからは大工様とバトンタッチで瓦葺き師の出番です。

 

 




 



八角堂は一角の角度が大きい事から既成の瓦をそのまま使用すると雨漏りの原因になりかねません。瓦メーカーの役物師(特別な瓦を造る職人)に本平瓦の長さを2倍の長さにするよう特注で制作して頂き雨水の侵入を防ぐように施工しました。他にも出隅部の瓦や面戸瓦など

八角堂用に特注の瓦を造っていただきました。特注瓦の中には『完成したものはそこから崩壊が始まる』という考え方から、わざと軒巴瓦の一カ所だけ法多山の文字を逆さにすることで、永遠に未完成であることを表現した瓦もあります。このような特殊な瓦の作成に協力頂いた瓦メーカーの方々にも大変感謝しております。


 瓦メーカーや鬼師、そして宮大工棟梁の熱い思い、本平瓦や鬼瓦を志納された方々が「この屋根をどのような気持ちで見上げるのだろう」と色々な感情を抱きながら施工を進めていきました。施工では今まで培った経験を活かし、八角堂と向き合い、軒先の線、隅先、屋弛み、鬼瓦の角度、鬼瓦を据える位置、棟の線、路盤下の納まり、全体の納まり、バランス、すべてに配慮し作業を進める中、悩んだり苦労した箇所もありましたが納得する納まりを目指し、自分が今持っている最高の技術を出し切りました。


 瓦が葺きあがり路盤が乗り、仕上がった屋根を見た時の達成感は言葉で言い表せない程の、とてつもない達成感でした。期間が長く、その間にたくさん楽しみ、たくさん悩んだので愛着が湧き、出来上がった嬉しさもありましたが、「終わってしまったんだな…」と、とても寂しい気持ちにもなりました。数日後に屋根足場が取れたところを見た時、とても立派に感じました。その時の感情を例えるなら、大事な子供が親離れをして立派に成長したのような姿に見えた感情でした。

 瓦職人になり、今回このような素晴らしい八角堂を施工させていただき、体験できない経験をしました。折角いただいた貴重な経験です。身に付けたこの技術を後世の瓦職人に継承していく事も、新たに課せられた自分の使命だと感じております。

 

今の時代に職人の魂のこもった八角堂にご縁があった事に感謝しております。

ご住職様、飛鳥工務店様、この度は夢のような仕事をさせて頂き、ありがとうございました。

 

河原﨑瓦店 河原﨑太輔


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